あさお慶一郎(前衆議院議員 神奈川4区)

国会活動

東日本大震災後に行われた行政機関の長の人事に関する質問主意書

2012年05月11日 (金)

平成二十四年五月十一日提出

質問第二三八号

東日本大震災後に行われた行政機関の長の人事に関する質問主意書

提出者  浅尾慶一郎

 

東日本大震災後に行われた行政機関の長の人事に関する質問主意書

平成二十三年三月十一日、大地震と津波が東日本を襲い、一万六千名に及ぶ尊い命が奪われ、今なお三千五百人近くの方々が行方不明となっており、爪痕は未だ深く、深く哀悼の意を表したい。

被災地では、官民一体となり今日現在も復旧復興に取り組んでいる。復興を成し遂げるには、政治のリーダーシップと公務員の専門性の発揮が必要不可欠であるが、現政権の人事に一部こうしたことと逆行する側面が伺える。

当方の調査によって、震災後間もない平成二十三年七月一日付けで就任した仙台労働基準監督署長は、労働基準関係法令に基づく監督指導、司法事件処理、災害調査、未払賃金立替払処理の経験が、過去十年の間に〇件または一件で、ほとんど皆無であることがわかった。何故、同時期に同一の試験で入省し、現場で多くの経験を積んだ者との間に著しい差をつけてまで、震災後間もない時期に震災地の一丁目一番地である仙台労働基準監督署長にこのような未経験者を据えたのか。厚生労働省労働基準局は、選任した理由として、「多角的な見地で対応できる」、「被災地域の各種要望を把握し、連絡する等の業務を行う必要があった」ことを挙げているが、この真意を糺し、公務員制度全般における大きな問題点を明らかにすべきと判断される。

労働基準監督署長の人事は厚生労働省の専権事項ではあるが、それはあらゆる慣行や配置される者の業務経験を無視した恣意的な運用を許す趣旨ではなく、一部の幹部が何等明確な尺度が示されない「知識」という基準で人事を決定して良いものではない。このような人事は現場の著しい士気低下を招くだけではなく、労働基準監督署に救済を求める国民に不利益をもたらすことになるのは言うまでもない。

現場経験がほとんど皆無である者を労働基準監督署長に据えるというのは、あたかも航海の経験の殆ど無い者を、海上保安庁の巡視船の船長に据えるようなものである。震災地である宮城県で、震災後間もない平成二十三年七月一日にこのような人事が行われたことは極めて遺憾で信じ難いことである。

以上のことを糺すべく以下質問する。

一 労働基準監督署は、労働基準関係法令に定める最低限度の労働者の権利を使用者たる事業主に遵守させるために、事業主に監督指導を行い、監督指導に従わない悪質な事業主に司法処分を含めた厳しい処置を行う権限が与えられた法定機関であると理解しているが、この理解に誤りはあるか。

二 労働基準関係法令等が規定している労働基準監督署が行うべき業務は、監督指導業務、司法事件処理業務、災害調査業務、未払賃金立替払業務、労災補償業務以外にどのような業務があるか。法令等の形式的な記載ではなく、「国民視点に立って」具体的な業務を示されたい。

三 配置される人員が少ない労働基準監督署においては、労働基準監督署長自らが、前記二の監督指導や災害調査等を行っている例もあると聞き及んでいるが、これは事実か。

四 震災後間もない平成二十三年七月一日付けで、監督指導業務、司法事件処理業務、災害調査業務の経験がほとんど皆無である者を、仙台労働基準監督署長に就けた理由は何か。「経験」と回答するのであれば具体的な業務経験を、「知識」と回答するのであれば昇進試験、表彰、研修の実績など明確な尺度を示されたい。

五 仙台労働基準監督署長の選任にあたって、

①  「震災復興業務に必要な様々な課題に、多角的な見地で対応」するため必要な予算措置を講じ、法整備を行うのは厚生労働省本省であり、労働基準監督署は厚生労働省本省の指揮命令の下で、その経験を最大限活かして「法令に定める業務を迅速かつ適正に行うもの」と理解しているが、この理解に誤りはあるか。

②  ①の前提に立てば、特に被災地のような混乱が生じている現場において労働基準監督署長に求められる能力は、予算措置を講じるのに必要な「多角的見地」に基づく政策的な判断ではなく、労働基準関係法令の履行確保のための監督指導や災害調査等によって培われた「実地調査」の能力であるから、これに乏しい者が現場での指揮監督を行うとなれば、適正かつ迅速な国民の救済が阻害されるものと判断されるが、この見解に誤りがあるか。

③  仙台労働基準監督署長が、「被災地域の各種要望を把握し、連絡する等の業務は全て行う必要があった」のであれば、前記二にあげた五つの業務又はこれに関連する業務以外に、平成二十三年七月一日以降今日までの間に、仙台労働基準監督署はどのような要望を把握し、どのような機関に連絡をしたのか一例でも具体的にあげられたい。またこの一例にどのような経験を要するのか具体的に説明されたい。

六 現仙台労働基準監督署長と同時期またはその一年前に同一の試験を受けて入省した者で宮城県内に勤務する者が、平成二十三年十月二十六日の時点で、石巻労働基準監督署第一方面主任監督官、瀬峰労働基準監督署長等に配置されており、署の規模やその配置において大きな格差を生じているが、この格差は適正な能力評価によるものと解して良いか。そうであるなら、石巻署、瀬峰署に配置した二名は、この格差の一点からのみ判断すれば能力評価が低いということになるが、この二名を両署の主要なポストに就ける理由は何か。

七 同一の試験を受けて採用された国家公務員について、昇進試験、表彰、研修等の客観的な基準によらず、その就任ポストに著しい格差を生じさせてまで国の地方出先機関に配置している例はあるか。

八 労働基準監督署長の人事は、厚生労働省の専権事項であるとしても、あらゆる慣行や、実務経験、昇進試験、表彰、研修実績等を勘案せずに行われても、何等問題はないか、総務省の見解如何。

九 震災地である宮城県内の労働基準監督署長においては、親類縁者や友人等を不幸にも亡くした職員が、震災後も怯まず職務を遂行していると聞き及んでいるが、宮城県やその周辺で長年監督業務の経験を積み、宮城県を一番理解している地元の者を差し置いて、二の五つの業務の経験が著しく乏しい者を仙台労働基準監督署長に配置することについて、震災地の職員の理解が得られ、震災復興の一助になると政府は考えているのか、明確に回答されたい。もとより、人事は厚生労働省の専権事項であり、法令上個別の同意を得る必要の無いことは承知しており、「同意ではなく」、「理解」という観点から、「震災地で働く職員」の立場に立って、「血の通った」回答をされたい。

右質問する。

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平成二十四年五月二十二日受領
答弁第二三八号
内閣衆質一八〇第二三八号

平成二十四年五月二十二日
内閣総理大臣 野田佳彦

衆議院議長 横路孝弘 殿

衆議院議員浅尾慶一郎君提出東日本大震災後に行われた行政機関の長の人事に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

衆議院議員浅尾慶一郎君提出東日本大震災後に行われた行政機関の長の人事に関する質問に対する答弁書

一及び五の①について
労働基準監督署は、厚生労働省組織規則(平成十三年厚生労働省令第一号。以下「規則」という。)第七百九十条各号に掲げる事務を所掌する機関である。

二について
労働基準監督署では、事業場に対する監督指導、災害調査及び労働者災害補償保険の保険給付に関する事務のほか、労働安全衛生関係法令に基づく許可等に関する事務等を行っている。

三について
御指摘のような事例もある。

四及び九について
厚生労働省では、仙台労働基準監督署長としての標準職務遂行能力と適性を有すると認められる者として、お尋ねの職員を、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号。以下「法」という。)第五十八条第一項の規定に基づき、同署長に任命した。
また、当該職員は、着任以後、労働基準監督署長としての職責を果たし、仙台労働基準監督署の管轄区域の東日本大震災からの復興に向けても尽力していると認識している。

五の②について
御指摘の「「実地調査」の能力」の意味するところが必ずしも明らかではないが、厚生労働省では、規則第七百九十条各号に掲げる事務を統括し、労働基準監督署所属の職員を指揮監督する労働基準監督署長としての標準職務遂行能力と適性を有すると認められる者を、法第五十八条の規定に基づき、労働基準監督署長に任命している。

五の③について
お尋ねについては、例えば、仙台労働基準監督署の管轄区域内の事業場の東日本大震災からの復旧状況や事業者からの事業再開に関する要望について、関係市町村長等との情報共有や意見交換を行った。なお、この事例の対応には、行政一般に関する幅広い知識と経験が必要であったと考えている。

六について
厚生労働省では、石巻労働基準監督署第一方面主任監督官及び瀬峰労働基準監督署長としての標準職務遂行能力と適性を有すると認められる者として、お尋ねの職員を、法第五十八条第一項の規定に基づき、それぞれ石巻労働基準監督署第一方面主任監督官及び瀬峰労働基準監督署長に任命した。

七及び八について
御指摘の「同一の試験」、「昇進試験、表彰、研修等の客観的な基準」、「著しい格差」及び「あらゆる慣行」の意味するところが必ずしも明らかではないが、総務省としては、各府省の職員の任用は、法第二十七条の二、法第五十八条等の規定に基づき、適切に行われているものと承知している。

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