あさお慶一郎(前衆議院議員 神奈川4区)

湘南の風

●対談 川渕 孝一氏 2004.04 最新医療経営

2004年04月01日 (木)

●対談 川渕 孝一氏 2004.04 最新医療経営

誰もが夢に向かって挑戦できる社会づくりをめざす
小泉・自民党政権の受け皿を担うべく自由党との合併を果たし、マニフェストを掲げて総選挙に臨み、40議席増の躍 進を遂げるとともに、比例区で2,200万票を獲得して第一党となるなど、政権交代可能な二大政党の一翼を担う政党として確固たる地位を築きつつある民主党。イラクへの自衛隊派遣、遅々として進まない構造改革などの難題にも独自案を展開することで自民党との違いを明確に打ち出す同党は、21世紀における政 党のあり方を体現した政党として、若手議員を中心に積極的な活動・運動を実践している。
今回はそんな民主党若手議員の旗手として活躍する、浅尾慶一郎参議院議員をお招きし、自らの政治活動、社会保障制度の今後の方向性などについて、話を聞いた。

理想とする社会を語れなければその場凌ぎの政治になる

「川渕」
先生は39歳とまだお若いのですが、まずは政治家を志された経緯をお聞かせいただけますか。

「浅尾」
政治には昔から興味があったのですが、親が政治家でもありませんので、大学卒業後は金融機関に就職しました。世はバブル直前の1987年でしたから、とりあえず流行りの銀行に入行したわけです(笑)。
その後、90-92年にかけて、アメリカのスタンフォード大学のビジネススクールに留学したのですが、バブル全盛の日本経済はビジネススクールでも盛んに取り上げられていましたね。
しかし、いざ住んでみると生活感が違う。アメリカの方が遥かに生活が豊かだという印象を持ったのです。そこで何が 問題なんだろうかと考えるなかで、私は「個々の生活レベルを上げることが大切」ということに気付いたのですが、いかんせん銀行員の身ですからどうすること もできない。そんな折、ビジネススクールの同級生と将来について語り合うなかで、政治への興味が再び沸々と湧いてきたのです。もちろん、「そんなに簡単 じゃない」という気持ちも強かったのですが、「やってダメでも仕事ぐらいあるだろう」という同級生の言葉に後押しされました。

「川渕」
そして帰国後、新進党(当時)の候補者公募に応募、選出され96年の衆議院選挙に立候補されたのですね。

「浅尾」
ある日の休日、ゴルフ帰りに寄った洗車場で「新進党が候補者を公募する」という 新聞記事を偶然目にしたことがきっかけです。「これならなれるかな」って思いましたね(笑)95年に銀行を退職。初めての選挙となる96年の衆議院議員選 挙には落選しましたが、地元の皆様の温かい応援にも後押しされ98年の参議院議員選挙に再挑戦し当選。政治家となったわけです。

「川渕」
先生は政治家としての資質として、一つはどのような社会を構築するのかという理 想の社会像を語れる能力、二つ目は、現状からその理想とする社会に至るためにどのような政策の組み合わせを必要とするかを考察出来る能力、そして、三つ目 として約束したことは必ず守るという姿勢が必要と強調されています。なかでも、一つ目の「語れる」という言葉の重要性を意識した政治を信条とされているよ うですが。

「浅尾」
理想とする社会をはっきりと有権者である国民に語れなければ、その場その場の状 況対応の政治になってしまう。「自分はこういう日本にしたい」「こういう方向に日本をもっていきたい」ということが語れてこそ、「そのためにこういう政策 が必要」ということが言えるのではないでしょうか。
私自身、選挙に落選したこともありますが、夢を見つけて何度でも挑戦できる社会が望ましいと考えています。それが 自己実現につながっていくと思います。やりたいことが見つけられて、それに向かって挑戦していく過程が一番楽しいわけです。しかし、今、多くの人はリスク があるからやりたいことがあってもやらない。最初から見つけることを諦めている人も若者を中心に増えています。こうした人たちにどうやって夢を見つけさせ るか。そこが一番の政治の課題かなと思っています。誰もが夢を描けるそういう社会にしていくことが結果として社会全体のレベルアップにつながっていくので はないかと思います。

「川渕」
どうすれば皆さんが自己実現できる社会になるのでしょうか。

「浅尾」
ある程度自分の目標が見つけられている人には、セーフティーネットをつくり、失敗してもそんなに痛まないようにする。
たとえば、新しく事業を始めるときに、個人保証がなくてもお金を集められるようにすれば、事業が失敗しても自己破 産をしなくてすみます。問題は、夢や目標を見つけられなくなっている人、見つけることを諦めてしまっている人ですが、「やればできる」というモデルケース をマスコミなどで、どんどん報じてもらう。音楽やアニメーションでは世界でも活躍している人たちが沢山います。そうした、活躍の範囲を広げていく支援をす ることも大切だと思います。

求められるのは安心感の持てる裏づけのある政策

「川渕」
次に政治と医療の関係について、少しお話をおうかがいしたいと思います。医療 サービスそのものは対人サービスですが、医療や社会保障制度となる99.9%は政治すよね。先生にぜひ、おうかがいしたいと思っていたのですが、これから のわが国の医療制度を考えるうえで、政治には今、何が求められているのでしょうか。

「浅尾」
やはり一番求められているのは、社会保障制度全体に対する、短期的ではない中長 期も含めた安心感の持てる、裏づけのある政策でしょう。そして、もう一つは公平感だと思います。年金の場合、厚生年金は給与天引きですよね。ですが、一方 で国民年金ですと未納者が4割を超えている。もちろん払えない人もいるわけですが、サラリーマンからすると「俺たちは取られているのに、払わなくてもいい 人がいるのはずるい」と思う。その時点で公平感がなくなっているわけです。みんなが公平に負担していると思えなければ、制度として崩壊してしまいます。

「川渕」
私の実家は自営業ですが自分の両親は払っていましたね。そうすると同じ自営業のなかでも「払っていない人がいるのではないか」と思うわけですよ。

「浅尾」
「払っていない人」がいるということが、公平感を損わせているんですね。

「川渕」
確かに世の中には「払えない人」もいますね。これはしょうがない。問題は払える 能力があるのに払わない人。これは明らかにルール違反です。私の友人が厚生労働省の年金担当なのでこの点について聞くと、彼らは「ルール違反は取り締まら なければならない」の一点張りです。でもこれでは本質的な問題解決にはならない。ポイントは、「どうして払わないか」です。

「浅尾」 確かに取り締まれば良いですが、その取り締まりにかかるコストは納付されるべき 金額を遥かに上回るわけです。厚生労働省は年金の徴収コストは税金の6倍と言っていますが、私は実質10倍だと思っています。それでは、コスト的に言って も、能力的に言っても取り締まりきれないでしょう。

「川渕」 そうすると消費税という議論になりますが、この消費税も大変きつい税金ですよ。以前、自由党が主張していた「目的消費税」では22~23%になります。

「浅尾」 私自身は能力に応じて公平、効率的に考えると、少なくとも年金の基礎的な部分に ついては消費税しかないと思っています。厚生年金は違いますが、現在の国民年金は逆進的な仕組みです。今後毎年280円ずつ上がっていくことになっていま すが、1万3,300円という価格は、自営の方の所得者がいくらであろうと変わらないわけです。しかし、消費税であれば所得に応じて結果的には負担は変わ ります。

「川渕」 先生自身、消費税はどれくらい上げるべきとお考えですか。

「浅尾」 それはまさしく川渕先生の専門分野になってくると思うのですが、これまでわが国 は医療も年金も保険と税のなかでやってきました。しかし、世の中にはやはり、より多く負担できる人もいるわけです。その人たちからすると、保険と税という のは「自分と関係があるかどうかわからないのに取られている」という意識が強い。そこで考えられるのが、保険と税以外にも「貯蓄がある」という話です。社 会保障にかかわる部分に個人の貯蓄という考え方を導入すれば、消費税でまかなわざるを得ない部分は残るものの、社会保障費全体を圧縮することができると思 います。

「川渕」 「取られる」という発想は国民に蔓延しています。社会保険方式ですから、当然支払う義務があるわけですが、これだけ年金不安が募ると「その見返りとは何ぞや」という部分が非常に不透明なんですね。

「浅尾」 「年金や保険よりも貯蓄」という考えが出てきても不思議ではない環境にあります ね。もちろん、年金制度は大切ですし国民皆保険制度の果たしてきた意義も認識していますが、かといって自らの意志で貯蓄し、老後の生活や医療サービスを受 けるという考え方を、ただちに間違いと決めつけることはできません。キーワードは「国民が選択できる」ということでしょう。これからも年金制度を維持し皆 保険でいくのか、それとも貯蓄との選択性とするのか。これは将来の社会保障費の観点からも相当魅力的な話です。

日本の政党はすべてリベラル

「川渕」 政治の話で言えば、私はかねがね思っているのですが、日本の政党はみんなアメリ カでいう民主党なんですね。アメリカの民主党はリベラルです。「マイノリティ-を尊重しましょう」とか「弱者救済」を叫ぶ政党です。ところが、日本には共 和党がないのです。自由民主党も民主党も、公明党も…。みんなアメリカでいう民主党なんですね。

「浅尾」 もっと言うと、日本の政党はみんな民主党”風”なんですが、やや歪で、それは役人が上から見て弱い者を守ろうという政党なんです。これがいけないんですね。

「川渕」 そうなんですよ。タブーな話かもしれませんが、たとえば「生活保護を受けている方が本当に弱い人」なのかというという議論もあると思います。

「浅尾」 おっしゃるとおりです。本当に弱い人は守らなければなりませんが、法律に書いてある定義に該当すればと、自分を定義にあてはめて生活保護を受けているような人も存在します。そういう人は本当は弱くないと思います。

「川渕」 「ずるい人」と「弱い人」を混同してるんですね。かつては9割が中流階級と言わ れていたわが国ですが、近年では、所得格差は開く一方です。しかし、これを貧富の差が大きくなってきていると見るのか、努力しない人が増えていると見るの かによって、その対応は違ってきます。個人的には努力しない人は社会保障の対象にすべきではないと思います。もちろん、最低限のセーフティ-ネットは必要 ですが。

「浅尾」 最低限努力した人が1回で報われるかはわかりませんが、そのための環境はつくる べきですし、一方で、努力しない人は報われるべきではないという主張もおっしゃる通りだと思います。ただ、先ほども言いましたが、努力することを諦めてし まった人にも、「もう1回努力すれば良いことがある」と思わせてあげる機会は必要だと思います。そこが難しいのですが…。

「川渕」 先生はマレーシアのマハティール前首相とも親しいなど、アジア各国首脳とも親交 がある国際派としても知られていますが、わが国の医療も今まさに国際マーケットの時代を迎えています。「世界に冠たる…」などと言われるわが国の医療です が、私の講座の調査によれば、平均在院日数では米国の4.4倍、患者の死亡率でも腎不全以外では日本は米国より高いといったレベルなのです。実際に、アメ リカの非営利法人が、日本在住の日本人を対象に医療貯蓄口座を利用した会員制の医療サービスをアメリカ本土の病院で行う試みをスタートさせています。株式 会社ではなく、非営利法人がアメリカに患者を持っていってしまうという現実がそこまで迫っているのです。

「浅尾」 このままだとわが国医療の空洞化が懸念されますね。なぜそうしたことが起きるのか。日本の社会保障制度を問い直す良い機会だと思います。今後も川渕先生には、多方面からご意見をうかがえばと考えております。

「川渕」 本日はお忙しいなか、ありがとうございました。

「浅尾」 ありがとうございました。

< 川渕 孝一(かわぶち こういち) > 1959年、富山県生まれ。83年、一橋大学商学部卒業。86年、シカゴ大学経営大学院にてMBA取得。民間企業勤務の後、国立医療・病院管理研究所(現 在の国立保健医療科学院)、国立社会保障・人口問題研究所勤務(併任)、日本福祉大学経済学部教授、日医総研主席研究員などを経て、東京医科歯科大学大学 院教授、経済産業研究所ファカルティ・フェロー(現職)。主な研究テーマは医療経済、医療 政策など。

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